「雪の日の葛藤」
 (初出し:2012/1/7「小説家になろう」に掲載)

 白く降り積もる雪。

 世の中には、それをロマンチックだと言う人もいるらしい。
 私にとっては、ただ迷惑なだけなのに。

 まず第一に、雪かきが面倒。
 第二に、道が歩きにくくなる。
 他にも色々あるけれど、一番厄介なのは、
溶けかけた雪が屋根から落下すること。当たると結構痛い。

 だから、そう。
 私にとって、雪は凶器だ。
 出来ることなら、もう見たくもない。

 でも、春になって、夏になって。
 田畑を流れる小川の流れを眺めながら、きっと私は思うのだろう。
 今年も雪のおかげで干ばつにならなくて済むね、と。
 昔ながらのおばあちゃんの知恵袋じゃないけれど、
雪の少なかった年は、雪解け水も、雨の量も少ないのだ。
だから実は、カマキリの卵の高さとか、雪にまつわる言い伝えを、
初冬には気にしてしまう。
 こうして実際に降り積もると、うんざりするのに。

 外からガリガリと音がする。
 隣人が家の前の雪かきを始めたようだ。
 雪はまだ降り止まない。
 家が真っ白になる前に、せめて通路くらいは確保しなければ。
 湿布の臭いがする身体に鞭打って、コートを羽織る。
 今夜もまた、筋肉痛になりそうだ。


 story&photo by Masumi Suiren