桃太郎
第八話「コンプレックス」―2―
「………ここ、何処だ……」
最初に目を覚ましたのは猿――
「どうやら、どこかの村のようですね」
ではなく犬でした。
二人は村であろう土地のど真ん中に倒れていました。――二人だけ。
「雉がいませんね」
「全く、何処ほっつき歩いてるんだ、あいつは」
二人がそんな話をしていると、背後から足音が近づいてきました。振り向いた先にいたのは、雉でした。二人が地面に座っているので、立っている雉が、二人を見下ろす形になります。
「おい雉!お前どこ行って――」
「誰のこと言ってるの?私はそんな名前じゃないわよ」
「はあ?」「はい?」
前言撤回。よく見ると、その少女の背には、あの大きな羽が生えていません。どうやら、そこにいるのは雉ではなく、雉によく似た少女のようです。
「そんなことはどうでも良いわ。――あんた達には、これから罪を償ってもらわないといけないから」
「罪、ですか」
「そうよ。一つは、私の村に勝手に入った、いわゆる不法侵入の罪。そしてもう一つは――」
少女は、そこで言葉を切ると、軽く微笑み、
「――そのうち分かるわ」
そう呟くと、背を向けました。
「待て!一体どうしろって言うんだ!それに、オレ達と一緒にいたはずの奴を何処へやった」
少女は足を止め、
「……私が預かっているわ。あの子には、少し用があるから」
振り向かずにそれだけ答えると、どこかへ行ってしまいました。
「僕達、どうすればいいんでしょうか」
「さあ、な。罪とやらを償おうにも、何をすれば償えるのか分からないしな」
すると、再び背後から足音が近づいてきました。今度は、二人分。
「今度は誰だよ……」
呆れた猿が振り返ると、
「――!」
そこには、一人の少年がいました。
「何があったんですか?」
隣で目を見開いている猿をいぶかしんだ犬が振り返ると、
「……!」
そこにはもう一人、少年がいました。
一人の少年は、猿によく似た姿をしていました。
もう一人の少年は、犬に良く似た姿をしていました。
しかし、
「どうなってんだ……」
猿によく似た少年には尻尾が、
「どうして……」
犬によく似た少年には犬耳がありません。
驚いている二人に、
「ついて来い」
「あなた達の罪、償ってもらいますよ」
そ知らぬ顔で少年達は言いました。